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XTC - Life Begins At the Hop (1979)




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 アンディー・パートリッジ氏には申し訳ないのですが、一番はじめに聴いた、そして一番はじめにビビっと来たXTCの曲というのは、コリン・モールディング氏によるこの作品なのです。最初の出会いは、今では名盤として名高い、"BBC Radio One Live In Concert"、1980年の12月にロンドンはハマースミスパレイで行なわれたライヴでの音源です。渋谷陽一氏のNHK-FMの番組「サウンドストリート」の年末ロック特集だったか、そういうのを兄貴が録音して残していた、そのカセットテープでした。


こちらがそのライヴ。一曲目が"Life Begins At the Hop"です。


XTC -BBC RADIO 1 Live in Concert - Hammersmith Palais, London, 22nd Dec 1980




 やっぱりあの時の不思議な印象は忘れられませんね。何と表現していいか、ともかく、別の世界の別の音楽に出会い、引きずり込まれていったという感じでしょうか。自分がその当時知っていてイメージしていたどんなロックバンドの音とも違っていて、だけどロックなんですよね。そして親しみやすい。具体的にどう親しみやすかったのかというのも上手く説明出来ませんが、わかりやすいメロディー、それもセンチメンタルに溺れるというのでもなく、しかしまた人なつこくもあり、そして簡単過ぎてすぐ飽きるというのでもなく、聴く度にどんどん良くなって行く・・・。しゃぶってたら小さくなって行くはずの棒付きキャンディーが、小さくなるどころか大きくなって行ったという。そんなことは初めての体験で、心の中に新しい感覚の引き出しが形成されて行くのを感じたものです。これが「センス」というものか、と。



 それが16歳の夏。家の中が大変だったから、余計逃げ場を探していて、それで思い入れが強くなってしまったというのもあるでしょうけれど(笑)。


 スタジオ音源に触れられたのはその2、3年後。やっと自分で買った、上に挙げたシングルコンピレーション"Waxworks: Some Singles 1977 -1982"のLPでした。感動でした。ギターの響きに何だか60年代風のニュアンスを強く感じましたし、ついで彼らのヴィデオでモールディング氏のその当時のヘアスタイルやファッションを確認し、そのイメージを高めたものでした。でも、曲、アルバムごとに彼らが持つあまりの濃さ、情報量の多さにも驚きましたが(笑)。



 彼らがサイケデリックのパロディーバンドThe Dukes Of Stratosphearをやり出してからは、この曲の60年代リヴァイバルっぽさ(当時だとニューウェイヴを背景としたいわゆるパワーポップ)を再確認したのですが、でも、決してそれだけではないんですよね。催眠的なギターリフの繰り返しは人力テクノ(?)、のちミニマルミュージックっぽくも思えて来ましたし、彼らがどの程度意図していたのかはわかりませんが、とにかく、平凡さ、凡庸さをことごとく避けようとしているのだ、というのはだんだんわかって来ましたね。今となっては、それだけ様々な要素を、ときに大胆に、ときに繊細に纏め上げ形にしていく、その想像力/想像力/統合力こそが、まさしく彼らなのだと思うに至りましたが。


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 こちらは結局リリリースはされなかったアメリカ向け再録音のヴァージョン。ファンキーさと曲のなかでの強弱/アクセントを強めた様に思うのですが、その分、ミニマルな感じは薄れた気はします。いかがでしょうか。


XTC - Life Begins At The Hop [Unused U.S. Single Recording]




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 人格形成期に、そして想像力の飛躍期に、色んなことを感じさせたり、考えさせたりしてくれた・・・それが今でも自分の血となり肉となっている訳で・・・XTCにはいまでも足を向けて寝られませんね。


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# by penelox2 | 2015-04-25 22:42 | X

Mental As Anything - Spirit Got Lost (1983)




 メンタル・アズ・エニシング。彼らの名前は1986年のヒット"Live It Up"でのみご記憶の方もおられるかと思います。実を申せば私も長いことそうでした。1976年にシドニーで結成され、1979年にアルバム"Get Wet"でデビュー、豪州ニューウェイヴバンドのひとつとして出発し、以後10数枚のアルバムをリリースし今なお活動中の彼らは、実に息の長い、今ではオーストラリアの国民的バンドのひとつと言えるかと思います。欧米では音楽スタイルから英国のマッドネス、スクイーズ、XTC、それにニック・ロウとの比較がよくなされるようで、そこも個人的に大変興味深いところです。


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 上の曲は彼らの通算4枚目のアルバムとなる"Creatures Of Leisure"からの曲です。最初「ドボチョン一家」(古くて失礼)でも始まるのかと思いました(笑)。それから声でちょっとばかりマッドネスを連想し、"Live It Up"とは違う彼らの姿に興味が湧いて他も色々聴くようになりまして。


 同曲のオーストラリアABCの音楽番組"Countdown"、1983年4月3日出演時の映像です。この映像から入ってたら余計ドボチョン一家をイメージしてたかも(笑)。

Mental as Anything - Spirit Got Lost ('Countdown' 3/4/83)




 同じアルバムからの曲をあれこれ聴いてみます。これは当時のオーストラリアのバンドの多くに(それにニュージーランドのバンドにも)感じられることでもあるのですが、乾いていて大陸的、表面上のんびりしている。けれど、奥のほうのどこかに何となく不穏というか、不気味な何かが見え隠れしてる気がするんですよね。その正体は、いまだによくわからないのですが。


Mental As Anything - Close Again


 オールディーズ的なメロディーを紡ぐ歌が、穏やかなレゲエビートの上で心地良くひなたぼっこしてるかのような・・・。

 彼らは元々アートスクールの友人達で結成したバンドで、ビジュアルアーティストでもあったらしく、こういったPVも自分たち(や仲間内)でアイデアを出していたようです。それがこの映像にも活かされているのかも知れません。


Mental As Anything - Brain Brain



Mental As Anything - Drinking Of Her Lips




 ここで気づいた方もおられるかも知れませんが、最初の曲とそれ以外の3曲ではシンガーが違うのです。"Spirit Got Lost"を歌っているのはキーボーディストでもあるグリーディ・スミス、それ以外の曲で歌っているのはギタリストのマーティン・プラザ。シンガーが複数いて、それぞれがソングライターでもあり、というのは、XTCやスクイーズ、マッドネス(それにスプリット・エンズ)とも通じますね。


 スミスはオールディーズ感覚のポップさが強く、少しハスキーな声のプラザは強烈ではないもののソウルっぽい。ソングライターとしては、あとふたり、のち脱退してしまいましたがレジー・モンバッサ(本名クリス・オドハティー)とピーター・オドハティーの兄弟もいまして、この4人それぞれが単独で持って来たり共作したりと、曲のクレジットみてますと非常にややこしいのですが、それでいてトータルな世界を形成しているのは凄いなと思います。そういうところもマッドネスと共通してますね。

 なお、その脱退したレジー・モンバッサは現在、オーストラリアのサーフィン/ストリートファッションブランドとして名高い、マンボ(グラフィックス)のデザイナーとしてよく知られるようです。



 上述したような豪州のバンドらしさに加えて、古き良きオールディーズを下敷きにした楽曲に当時のシンセなどの新しい音を新鮮な感覚で取り入れつつ(この折衷感覚こそが当時のニューウェイヴらしさだと思います)、おおらかで素朴ななかに、皮肉も入ったユーモア(たぶん歌詞を深く読めば、そこにXTCやスクイーズ、マッドネスと似たニュアンスを感じるのでしょうね)をちょいと挟み込む。そういうところに彼ららしさが出てるんじゃないでしょうかね。



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 日々の生活のなかで、肩に力が入り過ぎてるな、視野が狭くなってしかめっ面になってるかもな・・・そう感じたときに聴きたくなる・・私にとってはそんな音楽のひとつです。
# by penelox2 | 2015-04-23 22:33 | M

The Sinceros - Disappearing (1981)






 ここで取り上げる音楽の多くは、自分が思春期に出会った思い入れの強さゆえ、どうしても70年代末から80年代前半ぐらいのイギリスの所謂ニューウェイヴ系が中心になってしまいますが、何卒ご容赦下さい。



 リアルタイム、後追いも含め、もうずいぶんその時代の音楽は聴いたり、それについて書いたりしていて、特にここ数年は世界中の音楽ファンのYouTubeへの投稿のマニアックさのおかげで、リアルタイムで聴けなかった音楽でさえもずいぶん接することが出来るようになり、まさにYouTube様々ではあるのですが、それでも、殆ど存在を知らず、全く聴いたこともなく、そしてそれが実は大変好みのアーティストであった・・・ということも、まだまだあります。彼らがまさにそういう存在。


The Sinceros - Disappearing (1981)_e0133591_22245183.gif



 このThe Sinceros(ザ・シンセロス)のことは本当に数年前に知った状態で、何と素晴らしいバンドを見逃していたことか、恥ずかしいなと思うことしきりです。60'sオールディーズと、70'sAORと、そして当時のパワーポップ/ニューウェイヴ、それぞれの良いところが上手く溶け合ったソングライティングの巧みさも、小技が効いた演奏も、ソリッドな録音も、全部自分好みで、最初聴いたときは興奮したものです。


 ロンドン出身、パブサーキットで活動したR&BバンドThe Struttersを母体とする4人組(ベース、ドラムの二人はリーナ・ラヴィッチの1978年のアルバム"Stateless"にも参加しています)。上に挙げた曲はガス・ダッジョン制作による1981年の2nd(そして最終)アルバム"Pet Rock"より。アルバムには元The Recordsのヒュー・ゴウワーが1曲参加しています。


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 上に挙げた曲は、自分が書きたいような曲を他の人に書かれてしまっていた・・・という意味で、はじめて聴いたとき思わず全身に電気が走ったものでした(笑)。そういう経験がたまにあるのです。The Comsat Angelsの"High Tide"、Travisの"Why Does It Always Rain On Me?もそうでしたね。


アルバム"Pet Rock"より。どれも実にさりげなくセンスが良いと思うのですが如何。

The Sinceros - Barcelona



The Sinceros - Falling In And Out Of Love




 下の曲にもビビッと来ました(笑)。こんな素晴らしい曲でバンド最後のアルバムを閉じるなんて、切ないじゃないですか。曲の良さが一番大事なんだ・・・そんなスピリットが伝わってくる作品で終わりになるなんて。


The Sinceros - Midsong




 キーボーディストのドン・スノウはその後Squeezeにも参加、ベース/ボーカルのロン・フランソワはThe Teardrop Explodesの後期("Wilder"の頃)に参加、その後オーストラリアに移住、Euroglidersをはじめ様々なアーティストと活動、ドラマーのボビーアーウィンもニック・ロウやヴァン・モリソンとの活動を含めセッションプレイヤーとして活動して来たようです。しかし何より残念なのは、メインソングライター/ボーカル/ギターのマーク・ケルドセンだけがその後音楽業界を離れてしまい、既に故人だということ。



こちらの彼らを紹介するサイトでのドン・スノウの発言によれば、ケルドセンは解散時、「このバンドで成功できないんだったら、他の誰とやっても成功しそうにないよ」と語っていたといいます。


この良質で心ある音楽がもっと多くの方に届く事を願って止みませんね。
# by penelox2 | 2015-04-21 22:29 | S

Felt - Rain Of Crystal Spires (1986)




 6枚目のアルバム"Forever Breathes the Loney Word"(1986)より。フェルトとは、バーミンガム出身、ローレンスの独特な唱法と歌詞を中心に、前半はアルペジオ主体のギターサウンド、後半はオルガンが大きく導入されよりバンド的に完成されたアンサンブルのアートポップ・サウンドで80年代に活躍、チェリーレッド、クリエイションといったインディーレーベルに10枚のアルバムを残した人たち。


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 それまでのモーリス・ディーバンクによる透明で儚いギターサウンド主体の世界から抜け出して、ギターとオルガンによる快活なサウンドで彼らの新しいトレードマークを作り上げたこのアルバムを聴いていて思い出したのは、本当に個人的な話になってしまいますが、自分のバンドThe Penelopesの91、92年の頃、1stアルバム録音以前の頃のことです。Feltの曲に"Penelope Tree"、"Evergreen Dazed"といったタイトルの曲があったので、デビューしたての頃、よく訊かれたんです、フェルト好きなんですよねって。もちろんそうでしたが、タイトルやバンド名が似たのは偶然でしたし、好きだともあまり強くは言わなかったんです。それには理由がありまして。


 まずひとつは、あの頃、フェルトを熱烈に好んでいたのはギタリストである私の弟と、それからオルガンプレイヤーだったから。もちろん私も好きでしたが、The Penelopesを始めたとき、80年代の英インディー的な音だけじゃなくて、2ndアルバムのような世界 - パワーポップやビートルズなどのメロディアスなポップロックの方向も追求したいなという欲求があったからです。それをしないと自分じゃないなという。だから、あんまりそのあたりの音楽だけにイメージを固定されたくないなぁと抵抗してたんですよね。


良い曲です。アンサンブルを真似たくなる自分がいます(笑)

Felt - September Lady




 ふたつめは、そもそも当時私が好きなフェルトというのは、1985年のアルバム"Ignite the Seven Cannons"の世界でして、そこから初期(ギタリストのモーリス・ディーバンクがいた時期)に遡って行ったクチなんです。だから、クリエイションに移ってからの作品は殆ど馴染んでなかったんですよね。でも当時のオルガンプレイヤーは、このマーティン・ダフィー参加後のオルガンをフィーチャーした後期の路線から入った人だったので、だいぶイメージが違っていました。年も4つ違ってたし、フェルトの話をしててもイメージがズレてまして。で、2つ下の弟は両方好きという感じで。



 それで、こういうオルガンなら、グレアム・パーカー&ルーモアのボブ・アンドリュースとか、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズのスティーヴ・ニーヴを気に入るんじゃないか、ってなって、それで皆でそのあたりも聴いてみたりもしたんですよね。



 92年の"The Birth Of the True"に収録されることになる"Evergreen"を録音しようかとなっていた91年の終わりの頃というのはそうやって、お互いを探っていて、視点がズレたままで、でも歩み寄ろうとして、面白がってあれこれ試してた・・・そんな感じだったんです。



 で、92年春から夏の1stアルバムの録音時には既に弟はいませんでしたし、もう1人のギタリストも辞めていましたので、ギターがだいぶ引っ込む代わりに、曲によってはマーティン・ダフィー風オルガン(私はボブ・アンドリュース風と解釈していた/笑)がかなり前に出ることになったんですね。


 だからあのアルバムは本当にあの当時居たメンバーによる色んな偶然の巡り合わせだったんだなぁと。



 そんな訳なので、今改めてこの作品を聴くと、無意識下でかなり影響されてたんだなぁと思うんですよね、この頃の彼らに。唱法じゃなくて、オルガンとギターによるバンドアンサンブル、当時のビフ・バン・パウ!やジャスミン・ミンクスもそうでしたが、オルガンの入ったギターポップ、という意味で。恥ずかしいぐらい(笑)


・・・とまあ、そんな昔のことも、あれやこれやと懐かしく思い出させてくれた作品です。


Felt - Down But Not Yet Out

# by penelox2 | 2015-04-19 01:07 | F

Shriekback - My Spine (Is the Bassline) (12") (1982)





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 1982年にリリースされたインディーレーベルYからのシングルです。シュリークバックとは、元XTCのキーボーディスト、バリー・アンドリュースがXTC脱退後、ソロ、ロバート・フリップらとのバンドLeague Of Gentlemenを経て、1981年に元Gang Of Fourのデイヴ・アレンらと結成したバンド。


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 彼らの音楽の面白みは、やはりメロディーよりもリズムにありますね。初期は英国産の実験的エレクトロファンクといった趣で、エレクトロニクスを多用した音の装飾を絡めながら盛り上げて行くグルーヴが聴き所(踊り所)ではないかと思います。


 そこからスタートして、よりポップで開かれたもの、懐深いもの、時にエキゾチックであったりアンビエントであったり、時に典型的80'sデジタルサウンドになったりしつつも、バリー・アンドリュースの存在感を前面に押し出したダンスポップミュージックへと変貌して行った、そんな印象なのですが、ここに挙げた曲で聴けるのは、その変遷の、まさに始まりの頃の世界です。


こちらはそのシングルのB面曲。

Shriekback - Feelers (1982)




1stEP "Tench"(1982)より。

Shriekback - Sexthinkone



Shriekback - Accretions



 当時の英国インディーらしい新しい感覚のポストパンク・ファンク/ダンスミュージックといった趣ですが、今なら普通にポップミュージックとして通るかも知れませんね。
# by penelox2 | 2015-04-17 00:06 | S