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Mental As Anything - Spirit Got Lost (1983)




 メンタル・アズ・エニシング。彼らの名前は1986年のヒット"Live It Up"でのみご記憶の方もおられるかと思います。実を申せば私も長いことそうでした。1976年にシドニーで結成され、1979年にアルバム"Get Wet"でデビュー、豪州ニューウェイヴバンドのひとつとして出発し、以後10数枚のアルバムをリリースし今なお活動中の彼らは、実に息の長い、今ではオーストラリアの国民的バンドのひとつと言えるかと思います。欧米では音楽スタイルから英国のマッドネス、スクイーズ、XTC、それにニック・ロウとの比較がよくなされるようで、そこも個人的に大変興味深いところです。


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 上の曲は彼らの通算4枚目のアルバムとなる"Creatures Of Leisure"からの曲です。最初「ドボチョン一家」(古くて失礼)でも始まるのかと思いました(笑)。それから声でちょっとばかりマッドネスを連想し、"Live It Up"とは違う彼らの姿に興味が湧いて他も色々聴くようになりまして。


 同曲のオーストラリアABCの音楽番組"Countdown"、1983年4月3日出演時の映像です。この映像から入ってたら余計ドボチョン一家をイメージしてたかも(笑)。

Mental as Anything - Spirit Got Lost ('Countdown' 3/4/83)




 同じアルバムからの曲をあれこれ聴いてみます。これは当時のオーストラリアのバンドの多くに(それにニュージーランドのバンドにも)感じられることでもあるのですが、乾いていて大陸的、表面上のんびりしている。けれど、奥のほうのどこかに何となく不穏というか、不気味な何かが見え隠れしてる気がするんですよね。その正体は、いまだによくわからないのですが。


Mental As Anything - Close Again


 オールディーズ的なメロディーを紡ぐ歌が、穏やかなレゲエビートの上で心地良くひなたぼっこしてるかのような・・・。

 彼らは元々アートスクールの友人達で結成したバンドで、ビジュアルアーティストでもあったらしく、こういったPVも自分たち(や仲間内)でアイデアを出していたようです。それがこの映像にも活かされているのかも知れません。


Mental As Anything - Brain Brain



Mental As Anything - Drinking Of Her Lips




 ここで気づいた方もおられるかも知れませんが、最初の曲とそれ以外の3曲ではシンガーが違うのです。"Spirit Got Lost"を歌っているのはキーボーディストでもあるグリーディ・スミス、それ以外の曲で歌っているのはギタリストのマーティン・プラザ。シンガーが複数いて、それぞれがソングライターでもあり、というのは、XTCやスクイーズ、マッドネス(それにスプリット・エンズ)とも通じますね。


 スミスはオールディーズ感覚のポップさが強く、少しハスキーな声のプラザは強烈ではないもののソウルっぽい。ソングライターとしては、あとふたり、のち脱退してしまいましたがレジー・モンバッサ(本名クリス・オドハティー)とピーター・オドハティーの兄弟もいまして、この4人それぞれが単独で持って来たり共作したりと、曲のクレジットみてますと非常にややこしいのですが、それでいてトータルな世界を形成しているのは凄いなと思います。そういうところもマッドネスと共通してますね。

 なお、その脱退したレジー・モンバッサは現在、オーストラリアのサーフィン/ストリートファッションブランドとして名高い、マンボ(グラフィックス)のデザイナーとしてよく知られるようです。



 上述したような豪州のバンドらしさに加えて、古き良きオールディーズを下敷きにした楽曲に当時のシンセなどの新しい音を新鮮な感覚で取り入れつつ(この折衷感覚こそが当時のニューウェイヴらしさだと思います)、おおらかで素朴ななかに、皮肉も入ったユーモア(たぶん歌詞を深く読めば、そこにXTCやスクイーズ、マッドネスと似たニュアンスを感じるのでしょうね)をちょいと挟み込む。そういうところに彼ららしさが出てるんじゃないでしょうかね。



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 日々の生活のなかで、肩に力が入り過ぎてるな、視野が狭くなってしかめっ面になってるかもな・・・そう感じたときに聴きたくなる・・私にとってはそんな音楽のひとつです。
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by penelox2 | 2015-04-23 22:33 | M

Everybody Is Fantastic - Microdisney (1984)


 1980年、アイルランドのコークでキャーサル・コフラン(Vo/Kb)とショーン・オハーガン(G)により結成されたマイクロディズニーは、コフランによる怒りや喜び、悲しみ、冷笑...様々な感情を短編小説風にちりばめたワードプレイによる、いかにもアイリッシュな文学的歌詞、スコット・ウォーカー風の(時に生々しく迫る)ソウルフルで存在感あふれるボーカルに、(のちHigh Llamasで全開になる彼のアメリカンミュージックからのフィードバックが色濃い)オハーガンのアメリカン・ロックの流れを汲むギタープレイがからみ合った、本当に個性的なポップロックをやっていました。

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 このデビューアルバムはそもそもチェリーレッドから出る予定だったようですが、再録音されて結局ラフトレードからのリリース。次のアルバム"The Clock Comes Down The Stairs"で大ブレイクすると、VIrginに移籍。88年に解散するまで2枚のアルバム"Crooked MIle"、"39 Minutes"を残します。これらの作品では「ネオ・アコースティック」派の次なる段階と言えた「スティーリー・ダン」シンドローム的なAOR路線を、よりソウルフルなスタイルで推し進めました。こちらもまた聴きものですが、このデビューアルバムの簡素で素朴な歌心あふれる音楽もかなり魅力的。このバンドも「ネオアコ」に一応括られており、野太くお洒落にならない朴訥なVoスタイルゆえに地味な評価ですが、そういう括りは一度外して聴いてみて下さい。最終曲はこのアルバムタイトルに逆らうような"Everybody Is Dead"。"I Love You"と叫びながら消えて行くこの曲で幕を下ろすことに、きっとある意図を感じる筈。もしそのことに引っ掛かったら、ぜひこんな世界にも思いを馳せてみて欲しい・・・たとえばソウルミュージックのなかにある悲しみ。たとえば60年代後半から70年代前半のアメリカン・フォークロックのやるせなさ。またたとえば、アイルランド文学に描かれる人々の生活。薄明かり(夕闇)のジャケット写真がそれらとつながる時、陽気で素朴なアイルランドだけではない、印象的な世界が目の前に開けて来ると思います。

Microdisney fansite
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by penelox2 | 2008-02-11 21:11 | M